「なんで何回も通うの?」歯石取りに複数回の通院が必要な理由

2025.11.17

当院の歯石除去(スケーリング)の流れ

初診のご来院時に歯石除去が出来ないことがあります。
では、なぜ複数回の通院が必要なのか。
当院では、患者様お一人おひとりに痛みが少なく、安全で効果的な治療を提供するため、段階的な治療を行っています。

「歯石を取るだけなのに、なぜ何回も通わないといけないの?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、いきなり歯石を取ることには、大きなリスクがあります。

 

【いきなり歯石を取ることの3つのリスク】

1. 強い痛みと歯茎が大きく下がるリスク

● 歯茎が炎症を起こしている状態での歯石除去は、強い痛みや出血を伴います
● 歯茎が大きく下がってしまう可能性があります
 

2. 細菌が血管に入るリスク(菌血症)

歯周病がある場合、歯茎の炎症部位には大量の細菌(歯垢など)が付着しています。

● 細菌が残った状態で歯石除去を行うと、処置中に歯茎にできた微細な傷から細菌が血管内に侵入し、「菌血症」を引き起こすリスクがあります
● 菌血症は、動脈硬化の進行や、心臓・脳血管系の重篤な全身疾患の原因となる可能性があります
 

3. すぐに歯石が再形成されるリスク

歯石は、毎日の磨き残し(歯垢)が石灰化したものです。
セルフケアの方法を見直さないまま歯石だけを取っても、磨き残しの癖は改善されません。

● そのため、すぐに新たな歯垢が蓄積し、短期間で歯石が再形成されてしまいます
● 治療効果は一時的なものにとどまり、歯周病の再発や進行を防ぐという長期的な目的が達成できません

 

【「磨いている」と「磨けている」は違います】

多くの方が毎日歯を磨いていますが、実際には磨けていない部分が残っていることがほとんどです。
当院では、まず患者様ご自身が正しいブラッシング方法を身につけ、歯垢を効果的に除去できるようになることを大切にしています。

プラークコントロール(歯垢管理)ができている状態で治療を行うと、治療が長持ちします。

● 歯茎の炎症が改善され、歯石除去時の痛みが軽減されます
● 細菌の量が減り、菌血症のリスクが下がります
● 歯石除去後も良好な状態が長く続きます
● 虫歯治療を行う場合も、詰め物・被せ物が長持ちします

 

【治療の優先順位は、患者様によって異なります】

当院では、初診時の検査結果をもとに、お一人おひとりに最適な治療計画を立てます。

● 歯茎の炎症が強い方 → 歯周病治療を優先
● 痛みのある虫歯がある方 → 虫歯治療を優先
● お口全体の状態を整えたい方 → セルフケアのサポートから開始

ほとんどの場合、まずはセルフケアのサポートからスタートします。
理由や処置内容は毎回丁寧に説明いたしますのでご安心ください。

 

【歯医者でのケアと、ご自宅でのケア、両方が大切です】

歯石除去は歯科医院でしか行えません。
歯肉炎・歯周病の方の場合、1〜2ヶ月に1回の歯石除去が推奨されています。

一方で、毎日のセルフケアは365日、1日2〜3回行います。

圧倒的にご自宅でのケアの時間の方が長いのです。
医院での処置だけでは十分ではありません。

 

どんなに歯科医院で丁寧に歯石を除去しても、毎日のセルフケアができていなければ、すぐに細菌が増殖し、元の状態に戻ってしまいます。

 

【標準的な治療の流れ】

1回目:初診・カウンセリング

● お口の中の状態を詳しく検査
● レントゲン撮影、歯周病検査など
● 治療計画のご説明
● お痛みなどの症状がある場合は応急処置を行います

2回目以降:セルフケアのサポート

● 患者様に合わせた正しいブラッシング方法をお伝えします
● 歯茎の炎症を軽減し、細菌の量を減らします(=痛み軽減・菌血症リスク低減)
● 歯石の再形成を防ぐ習慣が身につきます
● 虫歯治療の効果も長持ちします
● 知覚過敏予防の方法(優しいブラッシング・フッ素の使用)もご案内

歯石除去(スケーリング)・虫歯治療など

● 歯茎の状態が改善し、細菌が減ってから処置を行います
● 痛みが少なく歯茎への負担も軽減
● 菌血症のリスクも最小化
● 詰め物・被せ物も長持ちします
● 必要に応じて複数回に分けて丁寧に処置します

定期的なメインテナンス

● 歯肉炎・歯周病の方:1〜2ヶ月に1回
● 状態が良好な方:3〜6ヶ月に1回
● お口に合わせた最適な間隔でご提案

 

【患者様ごとに最適なプランをご提案】

お口の中の状態は、患者様お一人おひとり異なります。

● 歯茎の炎症
● 細菌の量
● 歯石の付着量と部位
● 歯周病の進行度
● 虫歯の有無と深さ
● 痛みの有無
● 歯石のつきやすさ
● 全身疾患の有無

これらを総合的に判断し、今のあなたに最適な治療プランと通院間隔をご提案いたします。
処置前には必ず現在の状態と、今日行う内容について丁寧にご説明いたしますので、ご安心ください。

 

【よくあるご質問】

Q: すぐに歯石を取ってほしいのですが…

炎症・細菌が多い状態で歯石を取ると
● 強い痛み・出血
● 歯ぐきが下がるリスク
● 菌血症のリスク上昇

安全のため、少し準備が必要です。

Q: 虫歯があるのですが、先に治療してもらえますか?

痛みがある場合や緊急性が高い場合は、もちろん虫歯治療を優先します。
ただし、プラークコントロールができている状態で治療を行う方が、詰め物や被せ物が長持ちします。

Q: 何回くらい通院が必要ですか?

初回の歯石除去や虫歯治療開始までは、標準的には2〜4回程度です。
その後は、歯周病など歯茎の状態に応じて1〜3ヶ月に1回の定期的なメインテナンスをおすすめしています。

Q: 歯石除去後、歯がしみるようになったのですが…

歯石が除去されると、これまで歯石で覆われていた歯の根元が露出し、一時的に知覚過敏の症状が出ることがあります。
当院では、知覚過敏予防のための優しいブラッシング方法やフッ素の使用方法もお伝えしていますので、ご安心ください。

 

私たちがお口をケアできるのは月に1回程度。患者様がご自身でケアできるのは毎日。
だからこそ、歯科医院とご自宅、両方のケアで、細菌をコントロールし、お口と全身の健康を守っていきましょう。
ご不明な点がございましたら、お気軽にスタッフまでお尋ねください。

 

「ちゃんと治したい」「でも痛いのはイヤ」

そんなお気持ちに寄り添いながら、お口の状態に合わせた最適な治療をご提案します。

気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談くださいね。

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